令和時代における「新たな学びのスタンダード」として始まった一人一台端末の整備。
これは学校における学びの可能性を広げるだけでなく、教員の業務負担を軽減し働き方改革を実現していくことも期待されています。
今回は実際に一人一台端末が整備され日々その活用法を模索する現場から、私のこれまでの実践と、現時点で感じるメリット・デメリットについて個人の感想としてまとめてみたいと思います。
ICT関係はちょっと苦手なんだよなぁ…
これまでの学校教育を大きく発展させる力を持っているのは確かだから、上手に活用していきたいね。
※ご紹介しますのは個人の実践に基づく見解ですので、予めご了承ください。少しでも先生方のご参考になれば幸いです。
GIGAスクール構想とは?
GIGAスクール構想は、Society 5.0時代を生きる子どもたちに対して、
これまでのノートや鉛筆を使った授業に、一人一台の学習者用PCなどを活用するICT教育を取り入れることで、学習者それぞれに最適化された学び や、創造性を育む学び の実現を目指しています。
※Society 5.0とは
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
GIGAスクール構想における一人一台端末活用の目論見としては、
- クラウドを活用した、児童生徒一人一人の学習記録などのデータ収集と分析
- デジタル教科書や教材の活用
- 高校や大学との連携
- AIドリルなど先端技術を活用した、児童生徒一人一人に最適な学習コンテンツの提供
- 新しい学習指導要領に基づく主体的・対話的で深い学びの実現
- 遠隔教育や教師の遠隔研修の推進
などが挙げられています。
また、GIGAスクール構想では目指すべき次世代の学校・教育現場が示されていますが、その中に「校務の効率化」もあります。
これらは本来2019年から4年間をかけて整備されていくはずでしたが、コロナ禍の一斉休校を機に大幅な前倒しが行われました。
一人一台端末導入後の活用実績と成果
一人一台端末が導入され実際に運用する中で、個人的に良かったと感じたことをまとめてみたいと思います。
授業における活用
画像や映像などを共有することが容易になったので、授業内容が視覚的にも理解しやすくなりました。
私が担当する数学では、動点問題やグラフ、方程式を使った文章問題の図的整理、図形、データの分布など全ての単元での活用が見込めます。
そのほか生徒のノート記述内容を画像として共有したり、私が机上で作図する様子をその場で動画配信したりと様々なチャレンジをしました。
道徳では内容に関連するYouTube動画を視聴したり、試験導入されていたデジタル教科書を活用したりもしました。
その中で、ホワイトボード機能を使用した意見交換もやってみましたが
普段人前で自分の考えを話すことが苦手な生徒も、積極的に文字を打ち込んでいました。
また教員が板書に要する時間を短縮することができたので、それに伴って生徒同士で交流したり問題を解いたりする時間が増えましたし、オンライン会議機能を使えば自宅学習をしている生徒に授業をライブ配信することもできました。
正直、YouTube先生には日頃大変お世話になっております。感謝。
授業外における活用
調べ学習については、以前までパソコン室を何時間目にどのクラスが使うか計画を立てなければなりませんでしたが、一人一台端末を持っているため全員が同時に教室内で調べ学習ができるようになりました。
修学旅行の事前学習や進路学習だけでなく、合唱コンクールの課題曲をYouTube動画で検索してパートごとに研究したり
運動会では「綱引きの必勝法」をクラス全員で調査・共有・検討し、綿密な作戦を立てたりもしました。
また私は生徒会担当でしたが、クラウド上で執行部の生徒にプレゼン資料作成や議会台本作成などの仕事を割り振り、受け取った生徒は休み時間や放課後、帰宅後など自分のタイミングで仕事を進め、できたものを クラウド上で共有し全員で加筆修正する ということもしていました。
集会についても感染拡大防止の観点からなかなか実施できない状況でしたが、オンライン会議機能を使うことにより疑似集会を行うことができました。
加えて生徒総会では総会資料を事前にPDF化して全校生徒で共有し、ペーパーレス化にも成功しました。(総会資料の印刷って紙も時間も大量に消費するんですよね・・・)
教員の業務における活用
学校で定期に行う生活アンケートを端末上で実施することにより、印刷や結果をデータ入力する手間が無くなり、集計も自動でされるためかなりの負担軽減に繋がりました。
同様に、教科におけるミニテストも端末のアンケート機能を活用することで
自動採点や結果のデータ化まで行うことができました。
また講習会や簡単な会議はオンライン会議で行ったため出張の回数も減りましたし、三者面談なども事情がある場合はオンライン会議機能を使って行いました。
生徒の出欠管理に関しては連動したアプリケーションを保護者のスマートフォンにインストールしてもらい、そこから出欠や体調の具合を入力してもらうことで自動集計されるだけでなく、朝の電話対応件数 もかなり減りました。
一人一台端末導入後に増えた負担
端末管理関係の負担
やはり一番手間がかかるのは 端末の管理 ではないでしょうか。
私の学校の場合、端末保管庫の施錠と解錠は授業者が行うことになっています。
よって授業で生徒に端末を使用させる場合は、その前後の休み時間が5分程度削られます。(この5分が大きい・・・)
当初保管庫は解錠したままで運用していたのですが、休み時間に生徒が端末を持ち出し教室や廊下、階段などでゲームを始めたり写真や動画を撮影したりして、それらに関する苦情が発生したため
結果的に休み時間は使用を制限せざるを得なくなりました。
持ち帰りに関しては、端末の紛失を防ぐため自由に持ち帰えれるわけではなく、希望する生徒は担任や教科担当に申告してから持ち帰るようにしています。
申告を受けた教員は端末保管簿に日付や貸し出した生徒名などを記載し、生徒が返却したら端末確認後に再度保管簿へ返却日などを記載しなければなりません。
また、定期的に保管庫内の端末台数チェックも行います。(委員会から確認の依頼が来るのです)
もちろん端末が故障したり、破損したりした場合も、状況の聞き取りや保護者連絡、その他事務処理 が必要になります。
生徒指導関係の負担
やはり授業中にどうしても関係のないサイトを調べたり、こっそりYouTubeを視聴したりしている生徒もいました。
それによって成績が下がってしまっては本末転倒なので、見つけしだい指導するのですが、生徒側もタブを切り替えたりしながらうまいことやっています。笑
おのれYouTube!!許すまじっ!!
こいつ・・・
正直、生徒の端末を教員側からコントロールできる機能がないと解決は難しいですし、数学の授業を受けるよりもネットサーフィンした方が明らかに楽しいので、中学生の段階では仕方ないかぁ・・・とも思っているのですが、
「気になるので指導してほしい」といった依頼など、周囲の生徒からの情報提供があれば、授業者としてさすがにスルーすることはできません。
端末で撮影した動画をクラウド上に保存し、自宅で自身のスマホにダウンロードした後その動画を SNS上で公開した ということもありました。
その結果、動画に映っていた他の生徒の保護者から苦情が来て指導したこともあります。
また、端末を持ち帰った後で不適切なサイトを検索していた場合、検索履歴が教育委員会のフィルタリングに引っ掛かり、その情報が学校に送られて指導するということも何度かありました。
特に自死を思わせるワードが入っていた場合、緊急の対応をとります。
私の場合、
「死にたいけどトッポッキは食べたい」
という本のタイトルを検索した生徒を呼び出し、聞き取りをしたことがあります・・・。
その他の負担
これも地味に手間がかかるのですが、端末を授業で使用する際自宅に端末を置き忘れてしまった生徒がいたり、充電が切れてしまった生徒がいたりすると授業そのものが滞ります。
生徒が一斉にネットワークへアクセスしたことによる通信エラーなども同様です。最悪の場合
苦労して準備した教材が全く機能しない場合もあります。
また端末使用の頻度やその用途、活用スキルチェック、端末活用の成果と課題など様々なアンケートが委員会から教員宛てに送られてきますが、その処理にも案外時間がかかります。
現場の教員が考える一人一台端末今後の課題
現時点で私が考える、今後改善してほしいことは主に以下の4つです。
- ソフト面の充実
- 通信環境の改善
- 教員の端末活用スキル向上
- 生徒の情報リテラシー向上
①「ソフト面の充実」については、端末を授業で活用する際にベースとなるアプリケーションを自治体で設定するのはもちろんのこと、教員が様々なアプリケーションを試しながら 柔軟に教材研究ができるよう配慮してほしいと思います。
私の自治体では端末に新たなアプリケーションを入れるためには事前に申請し、許可を得なければならず、実際にインストールが完了するまでにかなりの時間を要します。
これでは一人一台端末の魅力は半減してしまいますね。(制限だらけのガチガチiPadが一時期話題になりました)
ベースとして導入するアプリケーションも、
簡単で分かりやすく、直感的な操作ができるもの
が望ましいです。
分厚い説明書を渡されてもそれを読んだり、使用方法を検討する時間が無いため活用にためらいが生じてしまいます。
③「教員の端末活用スキル向上」と④「生徒の情報リテラシー向上」については、やはりプロの力が必要だと思います。
最新の活用事例を紹介してもらえたり、講習会が定期的にあったりするととても心強いですね。
端末の活用方法については様々な機関から情報が発信されていますが、逆にサーチすること自体に時間がかかってしまい、結果的に教員のスキルの差が埋まりにくくなってしまっていると感じています。
そうした意味で、
「とりあえずここのサイトに行けばなんとかなる」
といった教材や活用方法のまとめサイトを国や自治体がリーダーシップをとって提供してくれるといいなぁと思います。
まとめ
ここまで一人一台端末の活用に関する私の実践と、現時点で感じるメリット・デメリットについて個人の感想としてまとめさせていただきました。
様々課題はあるものの、一人一台端末は上手に活用できれば学校教育の可能性を大きく広げてくれます。
今後このブログでも、私が実践した活用例などをご紹介していきたいと思いますので、お時間あるときにご覧いただけますと嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
日々走り続ける全国の先生方へ、敬意を込めて。