- 小さなことですぐイライラしてしまう
- 怒りに任せてつい余計な一言を言ってしまった
- 一度テンションが下がるとなかなか気持ちの切り替えができない
- 我慢でやり過ごすことが日常となり、心と体が疲弊している
このような経験があるという先生は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?
正直私は頻繁にあります。
そしてその度に「私は教員に向いていないのでは…?」とよく落ち込んでしまいます。
今回は私と同じような悩みを抱える先生方に向けて、私が本書を読んで考えたことや実践した結果などを踏まえながら、特にここはおさえておきたいと思うポイントを3つに絞ってまとめてみます。
いつも穏やかで余裕のある先生って憧れるよね。
本書では学びと練習を繰り返すことで、誰でもアンガーマネジメントの技術を身に付けられるとしているよ。
本記事の内容を動画にしたものです。通勤中や作業中のながら聴きにおすすめです。
※本記事は『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える 心のトレーニング』安藤俊介(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)の内容を参考に、私見を交えながら作成しております。
アンガーマネジメントとは?
私は当初アンガーマネジメントは「怒りの感情を消す方法」だと思っていました。
しかしそれは誤りで、本書で紹介されているアンガーマネジメントは「怒り」という感情と向き合い、上手にコントロールしていくための心のトレーニングを指しています。
- 反射的な言動をしない
- 怒りにくい人になる
- 怒りを上手に伝える
以上のような技術を身に付け、「怒り」に支配されずそれを自身でコントロールできるようになることを本書では目指しているわけです。
私はとにかく機嫌が表情に出やすいタイプで、一度その状態になるとなかなか抜け出すことができません。
そんな日はよく帰りの車中で一人反省会をしていたのですが、振り返るとそれは単に自分の行動を思い出して落ち込んでいただけで、次への具体的な改善には繋がっていなかったように感じます。
そうした意味で、精神論ではなく「怒り」の捉え方やそれに対する実践的な対処方法を本書から学べたことはとても貴重でした。
ポイント1:反射的な言動をしない
生徒指導に対して必要以上にスピードを求めない
本書では瞬間的な怒りへの対処療法として7つの方法が提示されていますが、それらすべてに通じることが
「反射的な言動をしない」
ということです。
“ 怒りのピークは6秒間である ” というのはよく聞きますが、これは6秒間やり過ごすことで理性が優位な状態になり、反射的な言動を抑制しやすくなることを指しています。
教員の仕事には問題行動を起こした生徒を指導するということも含まれているわけですが、『即時指導』を意識しすぎると言動が反射的になりやすく、生徒側も素直にそれを受け入れられなくなってしまうことがあると思います。
※もちろん即時適切に指導できればそれに越したことはないですが、それなりの経験と技術が必要な高度なテクニックだと考えます。
最終的に重要なのは 「指導のスピード」よりも「生徒が指導を受け入れること」 です。
教員側の心が整い、問題行動を起こした生徒と落ち着いてじっくり話せる余裕が生まれてから指導をしても、それは決して職務放棄にはならないと思います。
すぐその場で適切に指導できる先生には憧れますが、誰でも簡単にノーリスクでできることではないですね。
その時々で自分の心理状態も違うもんね。
“ 怒らない ” と決める
教員をやっている以上「ダメなものはダメ」とビシッと言える指導力のある先生に憧れるのは当然です。
むしろそうしないと生徒になめられて、いずれ学級の統制がとれなくなってしまうのでは? と不安になることもあります。
ですがこの考え方に縛られすぎたり、うまくできない自分を責めて落ち込んだりするのは少し違うのかもしれません。
なぜなら先生方それぞれにご自身のキャラクターや生徒との関わり方があって、だからこそ指導のアプローチも先生ごと・対象となる生徒ごとに異なってくると考えるからです。
事なかれ主義で必要な指導をしないのは問題ですが、指導の仕方やタイミングは先生ごとに工夫があって良いはずです。
やはり重要なのは 「生徒にどう伝えたのか」ではなく「生徒にどう伝わったのか」 です。
私も最近までビシッと叱れる先輩に憧れて、必要だと思う場面では大きな声を出したこともありました。ですが…
そのあと、どうしても後悔してしまうのです。
「ちょっと言い過ぎたかな?」とか「他のアプローチの仕方はなかったのかな?」とかウジウジ考えてなかなか切り替えられない。
部活の顧問や担任、副担など立場によっても生徒との距離感は違ってくるしなぁ。
なので私は緊急で生徒の身体に危険が及びそうな場合や、人格を否定するなど他者に精神的な苦痛を与える言動を生徒がしたとき以外は「怒らない」ということをマイルールとして決めました。
それ以外は必要に応じて放課後などに生徒を呼び出して「どうした?」と生徒の話を聞くことから始め、一緒に考えるスタイルを基本にしています。
その方が時間はかかりますが私自身のストレスも少なく済みますし、生徒に伝えたいことも事前にまとめられ、その生徒の特性に合わせた伝え方ができるようになります。
瞬間的な怒りをどうするか?
「怒らない」ことを決めたものの、怒りの感情が湧かないわけではありません。
掃除の時間に毎度遅れて来る上にしゃべってばかりで何もしない生徒がいれば、それは腹が立ちます。
こうした瞬間的な怒りに対する対処療法として本書では7つの方法が提示されているのですが、その中でも私が特におすすめしたいのが
「イメージの力を借りる」
です。
先ほどのような場面では「なぜ毎回同じことを繰り返すんだろう?」や「なぜ周りの人が自分のぶんも掃除してくれているのに何も感じないんだろう?」など、つい “ なぜ? ” を考えてしまいがちです。
本書によると、こうした “ なぜ? ” を考え始めると思考が怒りの原因から離れられなくなり、怒りそのものがエスカレートしやすくなるのだそうです。
このような場面で有効な対処法の1つとして紹介されているのが「イメージの力を借りる」で、例えば
- 真っ白な紙
- 黒い大きな幕
- 一面の砂浜
など「一色の、具体的なモノ」のイメージで頭をいっぱいにし、強制的に思考を停止させるという方法です。
さらに本書ではイライラした出来事や言葉を握りつぶして、ゴミ箱に捨てるイメージをする方法も紹介されていたのですが
私はこれが一番効きました!
人それぞれ効果的なイメージがあると思うのですが、試行錯誤を重ねた結果私の場合は
- 自分に課した「怒らない」というルールを思い出す
- 両手にグローブをしっかりはめる
- “ 怒り ” と書かれた的をいくつか宙に浮遊させる
→的の大きさや色、“ 怒り ” の文字の書体などできるだけ具体的にイメージします - 的を思い切りパンチして破壊する(爆発音込み)
というものに行きつきました。笑
そして個人的にとても大事にしているのが
⑤【感情に囚われて反射的な言動をしなかった自分】をちゃんと認めて褒める
というプロセスです。
たしかにこの5つのステップを踏めば6秒間を乗り切れそうだね。(ネネちゃんのママ?)
自分の心の中に生徒の話を聞くゆとりが生まれてから、その場で声をかけるのか放課後話をするのかを決めています。
ポイント2:怒りにくい人になる
ここまで反射的な言動を抑える方法について述べましたが、それと同じように重要なのがそもそも普段から怒りにくい自分でいるということです。
そうした自分をつくるための方法として本書では様々な手法が具体的に示されていますが、その中でも特に私が大切にしたいと思ったのは
「自分の中にある『~すべきだ』という考え方を見直す」
です。
本書を読んで
- 授業中は私語を慎むべきだ
- 学校はみんなで使う場所だから、みんなで掃除をするべきだ
- 生徒は教員に対して敬語を使うべきだ
といったように、自分がいかに多くの『~すべきだ』を持っているのかあらためて自覚したと同時に、私が普段イラっとしてしまうのはその 『~すべきだ』が満たされていない時 なのだと気付くことができました。
この『~すべきだ』は “ コアビリーフ ” といい、誰しもが持っていて個人個人で異なるものだと本書では説明されています。
考えてみれば当たり前のことですね。なぜなら人によっては
- 授業はみんなでワイワイ楽しく進めるべきだ
- 掃除はその場所を使った人がするべきだ
- 敬語を使うかどうかは本人の意思を尊重するべきだ
と考える場合もあるわけで、その違いはまさに個性であって頭ごなしに否定して良いものではありません。
大人子どもに関係なく、人それぞれ物事の捉え方が違うからこそ対話し、歩み寄ることが必要なのであって、そこに「怒り」は不要なのだと考えるに至りました。
また本書では
コアビリーフは「~べき」の他に「~はず」という言葉でも表現されます。「子供はこうするはず」などです。
この「~はず」は家族、友人、上司・部下など関係が近い人ほど強くなる傾向があります。
『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える 心のトレーニング』安藤俊介(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)
と説明されていて
たしかに「授業中に漫画を読んでいる生徒」がいるとして、私が授業者であれば正直イラッとしてしまいますが
その生徒が自分と関わりのない別の学校の生徒だったとすると、同じ人・行動でも自分との立場(距離感)が変わるだけでだいぶ受け取り方が変わってきます。
生徒の問題行動に対してまったく怒らないというのは難しいですが
- 誰もが『~すべきだ』という考え方を持っていて、それは個人ごとに異なる
※特に子どもの場合はその基準が自分本位になりやすい - 問題行動に怒っているというより、教員と生徒という立場(距離感)が怒りを誘発させている
この2点を時々思い出すようにすることで、私はイライラする回数がこれまでと比べてかなり減ったように感じています。
業務に追われて忙しい状態が続くと、考え方がつい自分中心になって視野が狭くなりがちだよね。
「世間一般の常識だから正解」だと決めつけてそれを押し付けるのではなくて、まず対話して相手を知るというステップを大事にしていきたいね。
ポイント3:怒りを上手に伝える
ここまで
- 反射的な言動をしない
- 怒りにくい人になる
という2点について本書を参考にまとめてきました。
怒りに支配されて自分を見失うと取り返しのつかないことになる場合もあります。
一方で「怒り」という感情を完全に手放せばOKというわけではありません。
生きていく上では、危険を避けたり自分を守ったりするために怒ることが必要な場面もあります。
冒頭お伝えしたように、そうした意味でアンガーマネジメントは「怒りの感情を消す方法」ではなく、「怒り」という感情と向き合い、上手にコントロールしていくための心のトレーニングを指しているのです。
つまりアンガーマネジメントは怒ることを禁止しているわけではなく、怒ることが必要な場面では感情に支配されず適切に怒れるようになることを目指しているわけです。
本書では
上手な怒り方とは、自分のリクエストを伝えることです。相手を責めることでもなく、自分のうっぷんを晴らすことでもありません。
『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える 心のトレーニング』安藤俊介(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)
として、怒りを上手に伝えるためのルールを7つ提示しています。
先に述べたように私の場合は
- 緊急で生徒の身体に危険が及びそうなとき
- 人格を否定するなど他者に精神的な苦痛を与える言動をしたとき
のみすぐにその場で怒る(叱る)ことを決めていますが、そうした場面以外でもこのルールは有効だと感じました。
その中で私が特におすすめしたいのは
「【私】を主語にして伝える」
です。
これはいわゆる “Iメッセージ” というもので、主語を私にすることで「指示」や「強制」といったニュアンスを緩和し、「感想」や「お願い」のような柔らかくより相手が受け取りやすい表現で自分の考えを主張できるコミュニケーション方法の1つです。
例えば
- 私は、あなたが当番の仕事をしてくれないと困ってしまいます
- 私は、あなたがもう少し早くプリントを提出してくれると助かります
- 私は、あなたが遅刻するときに何も連絡をもらえないと心配します
- 私は、あなたに人を傷つけるようなことをしてほしくないです
などが挙げられます。
一方で “YOUメッセージ” はあなたを主語にしたもので「決めつけ」の要素が強く、批判的な表現になりがちで、相手に反感を持たれやすく人間関係を悪化させてしまう可能性が高くなります。
例えば
- あなたは、当番の仕事をサボって周りに迷惑をかけています
- あなたは、提出物の期日を守ることに対してルーズです
- あなたは、遅刻しそうだと思ったらまず学校に連絡するべきです
- あなたは、人を傷つけて何も感じないのですか?
などです。
※YOUメッセージも使い方と使う場面を工夫すれば、相手を認め励ます表現として活用することができます。
また本書では「ゆっくりと低い声で話す」というテクニックも紹介されていますが、ぜひこちらもあわせて身に付けたいです。
私はイライラがつのると、どうしても早口になってしまうクセがあります。
受け手の立場で考えてみると、相手がまくし立てるように早口でしゃべり続けたらとてもストレスに感じると思います。
場合によっては「面倒くさいから、適当に謝っておこう」という思考になることも十分ありえますし、そうなると「反省し改善する」という方向性からは大きくズレてしまいます。
自分がイライラしていると気付いた時こそ、相手の言葉にすぐ反応せず、一呼吸おいてから意識的にゆっくりと低い声で話すようにすることで、説得力が上がりますし余計な一言を言ってしまうリスクも軽減することができます。
やはり怒らなければならない時こそ感情のままに言葉を発するのではなく、「何をどのように伝えれば相手がより受け取りやすくなるのか」 を考えながらコミュニケーションをとっていくことが重要ですね。
私は普段「もし今こんなトラブルが起きたら、どうやって指導する?」というイメトレをよくしています。
まとめ
ここまで先生方にお伝えしたいアンガーマネジメントの実践方法について『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える 心のトレーニング(安藤俊介)』の内容を参考にしながら、私個人の経験やそれに基づく私見を交えつつ紹介させていただきました。
今回の記事をまとめると
★ポイント1:反射的な言動をしない
- 生徒指導に対して必要以上にスピードを求めない
→重要なのは「指導のスピード」よりも「生徒が指導を受け入れること」 - “ 怒らない ” と決める
→「どうした?」と生徒の話を聞くことから始め、一緒に考えるスタイルを基本に - イメージの力を借りて瞬間的な怒りを抑える
→【感情に囚われて反射的な言動をしなかった自分】をちゃんと認めて褒める
★ポイント2:怒りにくい人になる
- 自分の中にある『~すべきだ』という考え方を見直す
→人それぞれ物事の捉え方が違うからこそ対話し、歩み寄ることが必要 - 教員と生徒という立場(距離感)が怒りを誘発させていることに気付く
★ポイント3:怒りを上手に伝える
- 「私」を主語にして伝える
- ゆっくりと低い声で話す
となります。
本書では他にも「怒り」という感情と向き合い、上手にコントロールしていくための心のトレーニング(アンガーマネジメント)が、漫画や図を用いて視覚的にもわかりやすくまとめられています。
私と同じように「すぐイライラしてしまう自分を変えたい」「怒りとの上手な付き合い方が知りたい」と思ったことのある先生方には、ぜひおすすめしたい一冊です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
日々走り続ける全国の先生方へ、敬意を込めて。
本記事の内容を動画にしたものです。通勤中や作業中のながら聴きにおすすめです。
※本記事は関係者様のご承諾を得て作成しております。
記事を公開するにあたりご理解いただきましたこと、心より感謝申し上げます。
参考書籍:『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える 心のトレーニング』安藤俊介(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)