学級懇談会は教員と保護者が子どもの成長について意見交換し、より良い教育環境を作るための大切な場です。
一方で特に若い先生のなかには、懇談会をどのように進めればいいのか、何を話せばいいのかと悩んでしまう方もいらっしゃると思います。
そこで今回は学級懇談会をスムーズに進行していくためのコツや、おすすめの流れについて具体例を交えながらご紹介したいと思います。
初任の先生だとなかなかイメージがつかめないよね。
一緒に準備をしながらイメトレしていこう!
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※ご紹介しますのは個人の実践に基づく見解ですので、予めご了承ください。少しでも先生方のご参考になれば幸いです。
学級懇談会を開く目的(目指すゴール)
学級懇談会を開く目的は、大きく分けて以下の3つがあると考えています。
- 学級の雰囲気やそこで生活する生徒の様子を保護者に伝える
( 担任 ⇒ 保護者 ) - 今後の指導方針を共有して担任と保護者の協力体制を構築する
( 担任 ⇔ 保護者 ) - 懇談を通して保護者同士の交流を深める
( 保護者 ⇔ 保護者 )
学級懇談会は個別の保護者面談とは異なり、特定の生徒個人について情報交換するのではなく、学級全体についての話題を主として扱います。
また説明会ではなく懇談会であることから、担任が一方的に話をするのではなく、全員参加型でトークを展開することも大きな特徴のひとつです。
気づいたら担任だけがしゃべっていたってことあるよね。
わかるわー。
やはり参加してくださった方には最低でも一人一言は必ずお話する機会を設けたいですし、理想としては懇談会が終わった後に保護者同士の交流が自然と広がっているような状態を目指したいです。
ステップ1:はじめのあいさつ
1:座席配置
これは担任の先生方それぞれにやりやすい配置があると思いますが、私はいつも ○型または□型 に机を並べていました。
移動は少し手間ですが、こうすることで参加者全員と顔を合わせることができるのでおすすめです。
また教室の入り口に生徒名の名札を置き、保護者にご自身のお子さんの名札を取って着席してもらうことで、参加している方が誰の保護者なのかを確認しながら懇談会を進めることができるので便利です。
学活の時間などを使って、あえて生徒に手書きで名札を作ってもらうとイイ感じになりますね。
①出席者チェック用の学級名簿、②ペン、③名札、④本日の資料
以上4点セットを教室の入り口にセッティングしよう!
2:感謝のことば
まず最初に今日の懇談会に参加していただいたことと、日頃学校の教育活動にご協力いただいていることに対して感謝の気持ちを伝えます。
当たり前だけど、教師だけでは懇談会できないもんね。
忙しい合間を縫って足を運んでいただいていることはもちろん、中にはわざわざ仕事を休んで参加されている方もいるはずです。
保護者に直接お礼を言える機会は限られていますので、心を込めて丁寧にあいさつするよう心がけます。
3:担任自己紹介
すでに学年懇談会で自己紹介を終えている場合や、保護者面談などで個別にあいさつを済ませている場合などは、ここでの自己紹介を割愛してもいいと思います。
もし自己紹介する場合はなるべく端的にまとめ、和やかなムードをつくれるよう意識します。
私はよく
- 出身地の話
- 職務経歴
→ 学級担任の経験年数、受け持ったことのある学年、進路指導担当経験あり…など - 教員を目指したきっかけ
- 教員になって良かったと思うこと
これらのうち1つか2つを選んで取り入れていました。
趣味などプライベートな話をすることも考えられますが、個人的にそれらの話題には一定のリスクがある(教員という職業のイメージや懇談会という場の性質上)と考えているので、私は避けていました。
また苦労話や自慢話、必要以上にウケを狙った話なども同様に避けるようにします。
サラっと流すイメージでいきましょう。
ハキハキ話すことと、スマイルを忘れずにっ!!
ステップ2:スライドショー披露
私は懇談会の際、最初にこれまでの写真を音楽付きでまとめたスライドショーを流すようにしています。
やはり言葉だけでは伝えきれないことも多くあり、そうした意味でこのスライドショーは大変有効です。
そして上映中、担任はスライドショーを見ながら頭の中で以降の流れを確認・調整します。
ステップ3:保護者自己紹介
保護者の自己紹介はあえてスライドショーの直後に入れていました。
静かな状態でいきなり話し始めるよりは、いくらか話しやすくなるよね。
内容としては
- お子さんのお名前
- ご自身のお名前
- テーマについて一言
といった流れで、テンポよく回していくイメージです。
③で示すテーマは、懇談会を開催する時期や該当する学年によって様々考えられると思いますが、私の場合は「最近の子ども自慢」というテーマをよく用いていました。
これは言葉の通りですが、保護者目線で感じる子どもの成長や頑張っている姿などを教えていただくというものです。
その他のテーマとしては
- 中学生になってからの変化について感じること
- ご自身が中学生だった頃と今の中学生を比較して思うこと
- おすすめの家族旅行先(休日の過ごし方)
- 学校生活で身に付けてほしい力
などが話しやすく、候補として考えられます。
こうしたテーマは場も和みやすいですし、担任も普段の学校生活ではわからない生徒の一面について知ることができるのでおすすめです。
話すことに抵抗のある保護者もいらっしゃるので、スライドショー上映前にあらかじめテーマについて伝えておくといいですね。
保護者が話しているあいだ、担任は「そうなんですね!」「いいですね!」「すてきですね!」など適度にあいづちを入れ、参加者が話しやすい雰囲気をつくっていきます。
ステップ4:情報共有
これからご紹介するのは一般的に考えられる例です。
それぞれの学校事情で重点的に伝えることも変わってきますので、内容については事前に学年主任の先生と確認しておくことをおすすめします。
ただし共通して言えるのは、伝える情報はあらかじめ優先順位をつけて精選し、担任だけが長時間ダラダラと話し続けることは避けた方がいいということです。
スライドショーと自己紹介で温まった雰囲気をこのあとの懇談に繋げていきたいよね。
1:学級経営の方針について
特に第1回目の懇談会で取り上げることの多い話題です。
クラス全体で決めた学級目標や生活上の約束ごとなどを共有しながら、
「担任が何を目指し、どんな意図を持って生徒たちの指導にあたるのか」
を保護者に向けて丁寧に説明します。
担任と保護者が同じ方向を向いて教育にあたるって、難しいけど大切なことですよね。
注意が必要な点は、上から目線で自己満足の語りをしてはいけないということです。
私たちは教育を学び、そして日々教育に心血を注いでいます。
しかしながら保護者もまた、日々仕事をこなしながら我が子と向き合う教育のプロ です。
あくまで立場は対等であり、共により良い教育を実現していくパートナーでもあります。
間違っても保護者相手に「教育とは…」など講師気取りでレクチャーを始めることのないように気を付けます。
芯が無い人と思われるのもダメだけど、独りよがりな人と思われることもダメ。重要なのは「一緒に考えたい」というスタンスだってことね。
2:生活面と学習面について
懇談会での情報共有において、この2つの話題は外せません。
これまでのそれぞれにおける生徒の取り組みはもちろん、今後予定されている行事や各種活動など、これからの展望についてもぜひ保護者と共有したいです。
具体的な内容としては
- 休み時間のクラスの様子について
- 学級の係や当番活動の取り組み状況について
- 行事に取り組む姿勢について
→事後に実施した生徒の振り返りを引用する - クラスで起きたトラブルについて
→解決までの経緯もセットで(個人が特定される事案は避ける)
→今後予想されるトラブルについても触れておくとよい - 授業中の様子について
→事前に他教科の先生からも情報を仕入れておくとよい - 考査結果について
→考査後に実施した生徒の振り返りを引用する
→各教科における効率的な勉強方法を簡単に紹介するのもよい - 課題などの提出状況について
- 今後予定されている行事等とそれに向けた指導の方針について
などが考えられます。
やはり懇談会を開く目的を考えた時、良いことだけを伝えるのではなく、担任から見た クラスの課題 についてもしっかり伝える必要があると感じています。
生徒の頑張りや成長していく姿を肯定的に評価しながらも、一方でさらに伸ばしていきたいところや、指導する上で迷っていることなども含め【担任の所感】として保護者に伝えていきます。
ポジティブ8割、ネガティブ2割のバランスを意識しましょう。
3:生徒アンケート集計結果について
※生徒アンケートについては別記事にてまとめましたので、下のリンクより合わせてご覧ください。
ここでは事前に実施した生徒アンケートの結果から、特に共有しておきたいことを抜粋して報告します。
伝え方はそれぞれやりやすい方法で結構ですが、私はよく
- 今生徒たちの間で流行っていることは?
- 休日の家庭学習にかける時間は平均何時間?
- 1日のスマホ平均使用時間は?
- 親に言われて嬉しかったことランキングの第1位は?
といった感じで、クイズ形式にして発表していました。
(集計結果を資料として保護者に配付する場合は、クイズの答えになる部分のみ空白にしておきます)
アンケートの結果は懇談会後に発行する学級通信にも活用できそうだね。
4:最新の教育時事について
ニュースで話題になっていることや各種研修会などで学んだことを保護者とシェアするのもおすすめです。
たとえば
- 地域の教育や福祉サービス、イベントなどに関する情報
- ヤングケアラーやトランスジェンダーへの理解などの社会的課題
- 進学や就職など進路関係に関する最新情報
- SNS上のトラブルや闇バイトなどの若者関連事件
- 成人年齢引き下げにともなう諸問題や不登校生徒の急激な増加、通信制高校の台頭などの教育関連時事
以上のような話題が考えられますが、他にも候補になりえるものはたくさんあります。
こうした話題を提供することで、保護者と担任が教育について一緒に考えるきっかけになりますし、同時に 担任の学ぶ姿勢 を保護者に示すこともできます。
忙しい中で情報を収集し勉強するのはとても大変なことですが、その学びは保護者対応だけでなく、普段の生徒との関わりにも必ず生きてきます。
教員自身の教育観を見つめ直すきっかけにもなりますね。
ここまで【ステップ4:情報共有】として4つの項目についてまとめましたが、そのどれにおいても一方的に担任だけが話をすることは避け、
- 「ご存じの方はいらっしゃいますか?」
- 「ご家庭で実践された(話題になった)ことがある方はいらっしゃいますか?」
- 「ご質問やご意見などございませんか?」
など、間延びしない程度で保護者にリアクションを求めることも忘れないようにしたいです。
また保護者自己紹介の時と同様に、保護者のリアクションの中でのちの懇談時に引用できる可能性があるものはメモをしてストックしておきます。
ステップ5:懇談
1:目的と進め方の確認
懇談に入る際、最初にその目的と進め方について全体で簡単に確認します。
目的については先の【学級懇談会を開く目的(目指すゴール)】で述べた3つのうち、『懇談を通して保護者同士の交流を深める』が該当します。
よって1つのテーマについて議論して結論を出すというよりは、
1つのテーマについて各家庭の実践や考え方を共有する
といった言わばブレインストーミングに近いアイデア出しのスタイルで進めることを優先します。
この方が保護者も発言しやすいだけでなく、「そういう方法もあるのか!」という新たな気づきや、懇談後の「さっきのお話もう少し詳しく教えてもらえませんか?」「ウチでもやってみますね!」といった保護者同士の交流にも発展しやすいです。
進め方については
- 懇談時間(15分程度がおすすめ)
- 意見や質問がある人は自由に発言してもらってよい
- 担任から指名して発言を求めることもある
- 特定の個人を批判することは控える
以上の4つを説明します。
2:懇談テーマの確認
懇談テーマの設定については「多様な意見が出やすいこと」を重視して選ぶようにしています。
具体的には
- 子育てで大切にしていることについて
- 家庭学習の実際とそのサポートについて
- スマホ使用のルールについて
- 思春期の子どもとの接し方について
- 恋愛と教育について
- 家庭における進路相談について
- 受験生との関わり方について
などが意見も出やすく、保護者も他の家庭のリアルな実践を参考にできるのでおすすめです。
学年や開催時期、学級の課題などを考慮してテーマを決めるといいですね。
3:司会進行
司会進行の主な流れとしては
- テーマについて参加者全体に質問や意見などを求める
- 担任から保護者を指名して発言を求める
- 保護者の発言に対する質問や意見などを他の保護者に求める
- 保護者の発言について担任が深掘りする
これらをバランスよく組み合わせながら進めていくイメージです。
②の「担任から保護者を指名して発言を求める」場合、私はまず【ステップ3:保護者自己紹介】と【ステップ4:情報共有】でメモをした保護者に発言を求めるようにしています。
また保護者の発言に対しては「そうなんですね!」「いいですね!」「すてきですね!」「なるほど!」「私も参考にさせてください!」など、肯定的なあいづちを積極的に入れて発言しやすい雰囲気作りを意識します。
③の「保護者の発言に対する質問や意見などを他の保護者に求める」場合は
- ○○さんは△△さんのお話を聞いていかがでしたか?
- △△さんのお話について質問したいことなどございませんか?
- △△さんのお話について似た経験をお持ちの方はいらっしゃいませんか?
などのワードが使えます。
④の「保護者の発言について担任が深掘りする」場合は
- なぜそうされようと思ったのですか?
- 具体的なエピソードはございますか?
- 意識された点はございますか?
- 苦労された点はございますか?
- お子さんの反応はいかがでしたか?
- どのように対応されましたか?
- その後いかがでしたか?
- こうなってほしいという願いはございますか?
などのワードが有効です。
4:まとめ
懇談終了の時刻になったらここまで挙げられた主な意見について簡単に振り返り、担任から感謝の気持ちを伝えます。
そのとき「様々なご意見を伺って私自身とても勉強になりました」「今後○○のときに私も実践してみようと思います」など、担任の感想やこれからに繋がる一言もあわせて伝えるようにしたいです。
ここは端的にまとめて、ダラダラしゃべることのないように気をつけましょう。
ステップ6:おわりのあいさつ
最後にあらためて懇談会に参加していただいたことへの感謝の気持ちを伝えます。
そして保護者の中には担任に個別で相談したい方もいるはずなので、
「このあと個別にお話ししたいことがございましたら、遠慮せず担任に声をかけてください。」
とこちらからアナウンスするようにします。
せっかくだから「よろしければ教室の掲示物も見ていってください!」ってお誘いするのもアリだよね。
今後予定されている行事のお知らせと、それに向けた協力の依頼も忘れずにね。
まとめ
ここまでおすすめしたい学級懇談会の具体的な進め方ついてご紹介させていただきました。
私自身もそうでしたが、初任の先生はいきなり懇談会といっても何をどうすればいいのか、なかなかイメージがわかないと思います。
また担任として何年も懇談会をやっているが、どうしても苦手だという先生もいらっしゃるかもしれません。
この記事がそうした先生方のお力に少しでもなれたなら、執筆者としてこれほどうれしいことはございません。
※よろしければ下の黒板ゾーンにある今回の付録プリント『司会進行補助シート』もあわせてご活用ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
日々走り続ける全国の先生方へ、敬意を込めて。
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