基本的に教員は日々の実務をこなしながら同時進行で初任者研修を受けることになります。
現在学生さんであれば、大学を卒業して4月からいきなり担任となり、職場の同僚や上司あるいは保護者と関わっていくことを想像したときに、自分が社会人としてのマナーについてどれだけ知っているのか不安になったこともあるのではないでしょうか。
今回はそうした不安を抱える採用前の学生さんや、実際に現場で働き始めた新任の先生方を対象に私が
「これは初任の時に知っておきたかった!!」
と思った基本的なマナーについて本書を参考にまとめてみたいと思います。
無意識のうちに失礼なことをしていないか不安だな。
さりげなく気づかいのできるスマートな大人になりたいね。
※本記事は『人間関係もうまくいく!大人の気づかい&マナーサクッとノート』直井みずほ(株式会社永岡書店)の内容を参考に、私見を交えながら作成しております。
そもそもマナーとは?
本書ではマナーについて次のように定義しています。
自分が接する人を尊重し、敬意を払う気持ちをかたちにしたものがマナーです。
『人間関係もうまくいく!大人の気づかい&マナーサクッとノート』直井みずほ(株式会社永岡書店)
日頃から他者を気づかう思いやりの心を持ち、それを実際に目に見えるかたちで表現したものがマナーであり、その積み重ねが周囲からの信頼につながっているというわけです。
こうした視点を持つことは私たち教員のみならず、これから社会人となる生徒たちにとっても大切なことだと思います。実際、私も生徒に対して服装指導をするときは以下のように伝えています。
自分が “この人と仲良くなりたい!” と思う人と会うときはいつも以上に髪形や服装に気をつかうはずで、それと同じように「身だしなみを整える」ことは相手に対して
『私はあなたのことを大切に思っています』
というメッセージを伝えることにもなる。
これは社会生活を送る上で当たり前の最も基礎的なマナーです。
知っておくと役立つ言葉
マナーを考える上で最初に身に付けておきたいのは「正しい言葉づかい」ではないでしょうか。
これまである程度目上の人と接する機会があったとしても、社会人として職場の同僚や上司あるいは保護者と話すとなるとより一層気をつかいます。
本書では想定される場面ごとに実用的なフレーズが多数掲載されていますが、その中でも特に新任の先生が知っておくと役立つ言葉について厳選してご紹介します。
- 差しつかえなければ・たいへん恐縮ですが(意向をたずねる)
- お手数をおかけしますが・恐れ入りますが(お願い・相談する)
- たいへん心苦しいのですが・お役に立てず申し訳ございませんが(断る・辞退する)
- お気持ちはたいへんよくわかりますが・おっしゃることはごもっともですが(反対意見を述べる)
「クッション言葉」とは、本題に添えることで表現をやわらかくし、コミュニケーションをより円滑に進められるようにするための言葉です。
普段の会話はもちろん、メールの文章でも活用することができます。
こういう言葉を自然に使えるとスマートな印象になるよね。
また、クッション言葉ではありませんが私が普段よく使っている言葉も加えて紹介させていただければと思います。
- お時間よろしいですか?
- かしこまりました・承知しました
- お気づかいありがとうございます
- ご承知おきください・お含みおきください
「お時間よろしいですか?」は話しかける相手の都合を確認するために使います。
先生方は常に忙しいので話しかけるタイミングを計るのは当然ですが、その上で実際に声をかけるときも一度確認するようにしています。
さらに「○○の件でご相談したいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」というように、これから話すことの概要を先に伝えた方が良い場合もありますので、状況に応じて使い分けていただければと思います。
「ご承知おきください・お含みおきください」は打合せのときなど、全体に向けて知っておいてほしいことを伝える際によく使います。
例:「明日は清掃無しで放課となる予定ですので、ご承知おきください。」
「お気づかいありがとうございます」って言われると、なんだかほっこりしますよね。
電話対応の基本
電話対応に苦手意識がある新任の先生は一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
本書では電話対応についてシチュエーションごとに細かく整理し、実際の対応例を添えて丁寧に説明されているのですが、その中でも私が「最低限ここだけはおさえておきたい!」と思ったことをピックアップし、これまでの経験を交えながらまとめてみたいと思います。
電話に出るときのマナー
着信があったら基本的に3コール以内に出るようにします。もし電話に出るのが遅れてしまった場合は「お待たせいたしました。」と最初に一言添えるようにしましょう。
着信があったとき「出まーす!」と周囲に伝えてから電話に出るようにすると、やる気や積極性をアピールすることにもつながります。(こういう先生が近くにいてくださると本当に助かります)
あいさつの仕方は様々あると思いますが「お電話ありがとうございます。○○中学校の○○でございます。」と学校名と自分の名前を伝えるのが一般的ではないでしょうか。
このとき電話の内容をすぐに記録できるよう、ペンとメモ用紙を準備することも忘れないでください。
また、これは私の経験上の話ですが
- 「○○様。いつもお世話になっております」
- 「○○についてのご相談ですね」
など相手の名前や用件を復唱することで職員室内にいる担当の先生が電話に気付けたり、ネガティブな内容に対応しているときに電話機周辺の先生方が察して談笑を控えたりすることもできます。
電話を取次ぐときのマナー
担当者が自分ではない場合電話を取次ぐことになりますが、相手に失礼のないようスムーズに行いたいです。
本書では保留のタイムリミットは30秒以内が目安であるとし、30秒近くお待たせした場合は「たいへんお待たせしました」とお詫びすることが望ましいとしています。
待たせている側と待っている側では時間の感じ方が違うもんね。
そうした意味では電話を保留にして担当の先生を探しに行ったり、校内放送で呼び出したりすることはあまり好ましい方法とは言えなさそうです。
よって職員室内に担当の先生がいなかった(校内にはいる)ときは
- 「申し訳ございません。○○はただいま席をはずしております。」
- 「のちほど、○○から折り返しご連絡差し上げてもよろしいでしょうか?」
と伝え、折り返しの電話を希望される場合は相手の電話番号を伺うと良いでしょう。
電話をかけるときのマナー
こちらから電話をかけた場合
- 「私、○○学校の○○と申します。」
- 「こちら、○○様のお電話でよろしいでしょうか?いつもお世話になっております。」
- 「○○の件でご連絡いたしましたが、只今お時間よろしいでしょうか?」
以上がその基本的な流れになります。
この中で特に注意しなければならない点は、本題へ入る前に必ず相手の名前を確認する ということです。
保護者へ電話をかけたとき最初に「はい」とだけ応答されることがありますが、仮にかける相手を間違えていた場合、そのまま話を始めてしまうと無関係な人に生徒の情報を伝えてしまうことになります。
取り返しのつかないことになる可能性がありますので、電話相手は必ず確認するようにしましょう。
また本書では
- 午前9時以前→「朝早く申し訳ございません」
- 午後6時以降→「夜分に申し訳ございません」
と一言添えることを推奨しています。
もちろん教員同士の仕事の電話であれば、勤務時間内に電話をかけることが原則です。(実際は難しいですが・・・)
このほか私の経験上の話ですが、生徒のトラブルや問題行動に対して指導したことなどを電話で保護者に報告する場合、
- 電話する前に伝えることの要点をまとめて学年主任に確認する
- 電話の最後はその生徒の普段の頑張りを肯定的に伝える
以上2点に留意して電話をかけるようにしています。
言いにくいことを伝えるときこそ表現に気をつかいますが、逆に気をつかいすぎて表現が回りくどくなり、伝えたいことが伝わらないということは避けなければいけませんね。
電話を切るときのマナー
基本的には電話をかけた側が先に切り、電話を受けた側は相手が電話を切ったことを確認してから切るのがマナーです。
一方でこちら側が電話をかけた際に相手が不在の場合もあります。そうしたときは留守番電話に伝言を残すことになりますが、
- 「お忙しいところ恐れ入ります。私、○○学校の○○と申します。」
- 「こちら、○○様のお電話でよろしいでしょうか?いつもお世話になっております。」
- 「○○の件でご連絡いたしました。また改めてこちらからお電話いたします。」
- 「それでは失礼いたします。」
以上がその基本的な流れになります。
電話をかけるときのマナーでも述べましたが、間違えて電話をかけてしまうこともありえますので、伝言についても必要最低限の情報に留め、決して生徒の個人情報などを言わない ように気を付けましょう。
また体調不良で欠席した生徒の保護者に電話をかけた際は、用件を伝えた後に「お大事にしてください」など相手を気づかう言葉を添えたいです。
最後に電話を切るときは指で電話機のフックを静かに押して切り、その後に受話器を置くようにしましょう。
「ガチャッ!」という音が最後に入るとなんだか寂しい気持ちになるよね。
うっかり忘れがちな細かいマナー
ここでは、日常的に行っているちょっとした所作について個人の経験から気を付けた方が良いと思うことを挙げてみたいと思います。
うっかりマナー違反にならないよう気を付けたいですね。
- 座ったまま話を聞かない
- 席を外すときは椅子をしまう
- 来客時はお茶を出す
- 頼まれた仕事の進捗状況は自分から報告する
話を聞く態度については相手が先輩・後輩に関わらず忙しい中わざわざ自分の席まで来ていただいたのであれば、やはり座ったまま話を聞くというのは避けたいです。
特に自分に書類などを渡すために来ていただいたときは、必ず立って受け取るようにしています。
またメモをとることは良いとしても、他の作業をしながら相手の話を聞くことはその人に対して大変失礼になりますので気を付けましょう。
話しかけてきたのが後輩だとしても、同じ職場で働く仲間として敬意を持って接するのは当たり前ですね。
仕事の進捗状況の報告についてはケースバイケースになりますが、基本的に「○○しといてー。」と頼まれた仕事が完了したら「○○終わりました。」と報告するようにします。
こうすることで仕事を頼んだ側が「○○できたー?」と確認する手間が省けますし、行き違いや思い込みによるミスを防ぐこともできます。
そして何より、小さなことではありますが、こうした 丁寧な対応の積み重ねが周囲からの信頼につながっていく のだろうと思っています。
まとめ
ここまで先生方にお伝えしたいビジネスマナーの基本について『人間関係もうまくいく!大人の気づかい&マナーサクッとノート(直井みずほ)』の内容を参考にしながら、私個人の経験やそれに基づく私見を交えつつ紹介させていただきました。
本書では他にも採用前の学生さんや新任の先生方が知っておくと役立つビジネスマナーの基本について、様々なシチュエーションごとに具体的な対応が示されています。
一方で忘れてはいけないこととして、本書においても
マナーをただの「細かくて面倒なルール」だと勘違いしてしまうと、その振る舞いは形式的で心のこもらないマニュアル対応になってしまいます。
『人間関係もうまくいく!大人の気づかい&マナーサクッとノート』直井みずほ(株式会社永岡書店)
と指摘されているように、表面的なことにこだわりすぎるとかえって逆効果になってしまうこともあります。
そうした意味で大変おこがましいですが、もし私が採用前の学生さんや新任の先生方にアドバイスを送ることができるなら 「自分から動こうとする姿勢」 をまず大切にしてほしいと思います。
当然ですが、新任の先生であれば自分で判断して行動できる場面は限られます。
むしろ最初のうちは指示をもらわないと何をすれば良いかすら分からないはずです。
しかしそうした中でも自分にできることを探し、積極的に動こうとすることで周りからの評価は確実に変わっていきますし、自身の成長にもつながります。
率先して電話に出る。来客へ自分から声をかけてお茶を出す。汚れているところがあれば掃除をする。「何かお手伝いできることはありませんか?」と尋ねる。自分から元気よくあいさつをする・・・。
こうした 誰にでもできる当たり前のことを積極的にこなそうとする姿勢 をぜひ大切にしてほしいと思います。
もちろん慣れない環境であれもこれもと頑張りすぎることはよくありませんので、無理のない範囲で参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
日々走り続ける全国の先生方へ、敬意を込めて。
※本記事は関係者様のご承諾を得て作成しております。
記事を公開するにあたりご理解いただきましたこと、心より感謝申し上げます。
参考書籍:『人間関係もうまくいく!大人の気づかい&マナーサクッとノート』直井みずほ(株式会社永岡書店)